「物作りも一つの冒険である」
 宮内さんの心の温かさが伝わってくる。そう語る鍛冶師・宮内喜一郎さんは、この道50年の職人である。物を作るということは先が見えないため、勇気を必要とする半面、もし失敗したら・・・という臆病さもないとだめなのだという。この言葉からも鍛冶師としてのこだわりが伝わってくる。
 三人兄弟の長男だった宮内さんは、父親から財産として鍛冶師の技術を受け継ぎ、今日に至っている。「父親とは師匠と弟子という関係だったが、朝寝坊をすると咳払いをして起こしてくれたものだった。」こんな風に語る宮内さんからは、父親への大きな敬愛と尊敬の心が感じられた。
 主に打刃物を作っていた宮内さんだったが、十五年程前に旅行したドイツ・ゾーリンゲンで、鉄を芸術的に活用した燭台や看板に魅了されたことをきっかけに、鉄で作るものならあらゆるものを手掛けるようになったという。
 

工場にある手作りのおもちゃ。
宮内さんの温かさが感じられる。
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